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「そんなの適当で良くないっすか?」「細かすぎません?」
新人として運送業に飛び込んだばかりのあなたにとって、 日々の指導はきっと想像以上に厳しくて、細かくて、うるさく感じるかもしれません。
「いちいち言わなくても分かってるよ」 「そんなに怒らなくてもいいのに」 「この指導員、年下のくせに偉そうだな…」
もしかしたら、そんなふうに思ったことがあるかもしれませんね。
でも、ひとつだけ伝えさせてください。
指導員の”うるさい言葉”の裏には、命を守るための”願い”が込められているんです。
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ただ運転を教えてるわけじゃない
僕たち指導員があなたに教えているのは、「ハンドルの握り方」や「バックのコツ」だけじゃありません。
それは、”誰の命も奪わないための技術と習慣”なんです。
この仕事は「ただ車を動かせるようになればOK」じゃありません。
何トンもある鉄の塊を、街中で人の近くを走らせる。 その責任は想像以上に大きくて、重いんです。
ひとつ判断を間違えば人の命が失われる。 そしてその瞬間からあなた自身の人生も壊れてしまう可能性がある。
だからこそ、細かいことに口を出します。 だからこそ、「こんなことまで?」と思うようなことも何度も伝えます。
それはあなたのためであり、 あなたの隣を歩く”誰かの大切な人”のためでもあるんです。
伝え忘れた一言が、誰かの人生を変えてしまうから
実は、指導員側もいつも葛藤しています。
「これは言い過ぎかな…」 「嫌われたらどうしよう…」 「怒って帰っちゃわないかな…」
誰だって嫌われたくない。新人にも楽しく働いて欲しい。でもね、それでも言うんです。
なぜなら、もしこの一言を伝えなかったせいで事故が起きたら… もしそれが”命”に関わるような大事故になってしまったら…
一生後悔するからです。
自分の教えが足りなかったから事故が起きたのかもしれない―― そう思ってしまうんです。
だから、怖くても伝えます。 「うるさい」と思われても指導します。
あなたの”安全な行動や思考”が習慣化するまで何度でも何度でも。
あなたにこれから、誰の命も奪わないドライバーになってほしいから。
“命を守る為の技術と思考と習慣”をあなたに授けたいのです。
年下の指導員が”偉そう”に見える理由
ときには、自分より年下の指導員にあれこれ言われることもあると思います。 それが正直、面白くないこともあるでしょう。
でも、年齢じゃなく、会社は”信頼できる人”に指導を任せます。
・優れた運転技術を持ち ・安全に対する意識も高く ・伝える力もあり ・他人の命を預かる責任を持てる人
だから、その言葉には経験と想いが詰まっています。
決して「偉そうにしてる」のではなく、 「事故を防ぎたい」という強い信念があるだけなんです。
技術は、自分だけのためじゃない
ドライバーとして走る日々の中で、 “慣れ”や”自信”が少しずつ育ってくると、「まあ大丈夫っしょ」が増えてきます。
でも、プロのドライバーとして大切なのは、 「大丈夫かもしれない」じゃなくて「絶対に大丈夫にする」技術と思考。
それが事故を防ぎ、命を守る。
そしてその技術と考え方は、 新人時代に”うるさい指導員”から受け取った言葉の中に、たくさん詰まっているんです。
指導員だって、本当は早く帰りたいんです
ここだけの話…
指導員も一人の人間です。家族がいて、趣味もあって、疲れることもある。
自分だけで運転していれば、慣れた道具と慣れた車で、もっと早く効率よく仕事を終えられます。半分の時間で仕事を済ませて、さっさと帰ることだってできるんです。
でも、あなたと一緒に走っている時間は違います。
・あなたのペースに合わせて ・間違いそうな場面では声をかけて ・安全確認を一緒にして ・「なぜそうするのか」を説明して
本当なら30分で終わる作業が、1時間、2時間かかることもある。
それでも指導します。
なぜなら、あなたが一人前のドライバーになることが、何より大切だから。
あなたが帰った後も仕事は続く…
そして、もうひとつ知ってほしいことがあります。
あなたが「お疲れ様でした!」と帰った後も、指導員の一日はまだまだ終わりません。
まず、その日使った車両の洗車。 タイヤの状態、エンジンの調子、ブレーキの効き具合をチェック。 給油して、次の日の準備を整える。
そして最後に、その日のあなたの指導内容を書類にまとめます。
「今日はここができるようになった」 「この部分はまだ注意が必要」 「次はこんなことを教えよう」
一人ひとりの成長を記録して、より良い指導ができるように考える。
自分の行動がハラスメントになっていないか振り返り、より良い指導が出来るように改善する。
「厳しく」「でも怒鳴らず」「でも絶対に譲らず」「でも人として尊重し」「誰の命も奪わない技術と知識と思考と習慣を授ける」そのために工夫し明日の指導内容を考える。
それらが終わり、あなたが家でのんびりスマホを触っている頃、指導員はやっと家路につく。
そんな日も少なくないんです。
それでも、続ける理由
「なんでそんなに頑張るんですか?」
もしあなたがそう聞いたら、きっとこう答えるでしょう。
「あなたに、事故を起こしてほしくないから」 「家族のもとに、無事に帰ってほしいから」 「この業界で、長く活躍してほしいから」
それだけなんです。 シンプルで、でも重くて、大切な理由。
指導員にとって、あなたの成長が何より嬉しい。 あなたが安全に運転できるようになることが一番の報酬なんです。
ひとつ、お願いがあります。
「うるさいなぁ」と思ったとき、 ほんの少しだけでもいいのでこう考えてみてください。
「この人、なんでこんなに熱心なんだろう?」 「もしかして、過去に何かあったのかも」 「本当に守りたいものがあるのかも」
そう思えた時、きっと見える景色が変わってきます。
指導員も完璧じゃありません。 疲れてイライラしてしまうこともあるし、うまく伝えられずにもどかしく思うこともある。
それでも、あなたのことを思って毎日向き合っています。
さいごに。
あなたが無事故で長く走り続けられるように。 誰の命も奪わないドライバーになれるように。
僕たち指導員は、今日も心から伝え続けています。
時には「うるさい」と感じるかもしれませんが、その言葉の向こうにある想いを少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
あなたがプロのドライバーとして輝く日を、心から楽しみにしています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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