寂しさの向こうで走る誇り ─長距離ドライバーと家族の物語─

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長距離運行は社会を支える「見えない使命」

普段、僕たちが何気なく手にしている食料や衣類や日用雑貨、家電や医療機器、それらの材料──
それらのほとんどは、誰かが「遠くから運んできたもの」です。

全国どこでも必要なものが手に入る世の中。
でも実は、それは「すべての地域で原料調達から製造、販売まですべて完結できるわけではない」という現実の裏返し。

つまり、長距離運行という仕事がなければ今の社会は回らないのです。

決して目立つ仕事ではありません。
感謝されることも少ないかもしれません。
けれど誰かがやらなければならない使命として、今日もどこかで長距離ドライバーが眠気と寂しさと闘いながらハンドルを握っています。


運転手だって寂しい。でも、それを口にできないだけ

「寂しい」なんて言葉、ドライバーはそう簡単に口にしません。
家族に心配をかけたくない。
仕事だから仕方ない。
そうやって平気なフリをして、今日も走る。

でも、本当は――みんな、寂しいんです。

僕自身、1日で1000km以上走るなんて日常茶飯事でした。
娘が2〜3歳の頃、遠くの街に翌日着の荷物を載せてから一旦家に寄り、風呂と夕食を済ませて娘を寝かしつけてから出発し夜通し走る─そんな生活が続いていました。
しかし娘がある日、こう言ったんです。

「寝たらパパがいなくなるから、寝たくない」

胸が締めつけられました。

最高で1ヶ月間、家に帰れなかったこともあります。
久しぶりに帰宅したとき、玄関で泣きながら抱きついてきた小さな体。
あの時の温もりは、今でも僕の心に残っています。

そしてある日、夜中にほんの少し物音がするたびに
娘が「パパが帰ってきた!」と家中を探し回るようになったという話を妻から聞いて、
「もう限界だ」と僕は長距離をやめる決断をしました。

今ではたまに泊まりで仕事に行くと言うと、口うるさい父親がいなくなるので
「やった~☆じゃあ明日の夜はママとお菓子パーティーだ~!」なんて言われます(笑)

長距離の仕事自体は誇り高くて好きだったので今でもたまに長距離の仕事をしたくなりますが、
それでもあの時の選択は後悔していません。


家族の犠牲の上に、長距離運行は成り立っている

長距離ドライバーがどんなに寂しい想いをしているか。
──それと同じくらい、いやそれ以上に、家族も寂しさと向き合っているのだと思います。

子どもだって自分の気持ちを上手く言語化できないけど、寂しさを感じています。
言葉にできないだけで、心の奥ではいつも「会いたい」と思っているはずです。

それでも、
笑顔で「行ってらっしゃい」「気を付けてね」と送り出してくれる家族。
帰ってきたときに、心からの「おかえり」をくれる子どもたち。

家族がいたから、僕は遠くまで走れたんだと思います。

たとえ離れていても、
家族との絆は、ずっとそばで走ってくれている。


誰かが運ばなきゃ届かない。その“誰か”でいてくれるあなたへ

コンビニに並ぶおにぎりも、今着ている服も、
病院に届く医療物資も、普段何気なく使い捨てている日用雑貨も、
子どもたちが使うランドセルもお菓子もおもちゃも──

誰かが運ばなければ届かない。

それを「自分の役目」として受け止め、今日も走ってくれているあなた。
たとえ名前が知られなくても、拍手が送られなくても、
あなたが走っていることで、誰かの生活が守られています。

この社会にとって、あなたは“必要不可欠な存在”です。
誰が何と言おうと、勇敢なヒーローです。


最後に──走るあなたと、支えるご家族へ心からの敬意を

今この瞬間も、遠く離れたどこかで運転しているあなたへ。
本当に、ありがとうございます。

あなたが流した汗も、涙も、誰かの笑顔へと繋がっていきます。

そして、「行ってらっしゃい」「気を付けて」と信じて送り出し、
帰りを待ち続けてくれているご家族の皆さんへ。
あなたたちの存在が、運転手をどれだけ支えているか、僕は知っています。

運転手を支えるという事は社会を支えるという事。

よくトラック運転手を「底辺」と呼ぶ声を耳にします。
上等じゃないですか。何事も底が無ければ全て抜け落ちます。
底辺…最高の誉め言葉じゃありませんか!

寂しさの向こうで走る誇り。
その誇りを胸に、今日もトラックは走り続けています。

どうか、ご安全に─

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。
またお会いしましょう!

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ひろかず

ひろかず/トラックドライバー歴13年/現在大型トレーラー運転手&新人教育担当
未経験からトラック業界に飛び込み、現在は大型トレーラー運転手として勤務中。
これまでに延べ10名以上の新人ドライバー教育にも従事。
現場のリアルな情報や経験をもとに、初心者に寄り添ったブログ運営を心がけています。

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コメント

  1. かめだ より:

    とても素敵な記事を読ませていただき、ありがとうございます。

    >上等じゃないですか。
    >何事も底が無ければ全て抜け落ちます。
    ここがカッコ良すぎてしびれました!!

    私は元々製造関係の会社で働いていましたが、自社で製造したものが出荷されていく様子を見て
    運転手さんと物流業界に興味を持ち
    運送会社へ転職しました。

    外側から見るのと、内側から見るのではやはり違いますね。
    運転手さんへの尊敬の意がますます強くなりました。

    今後もお身体に気をつけて頑張ってください!

    • ひろかず ひろかず より:

      温かく嬉しいお言葉本当にありがとうございます!
      もちろんどんな仕事も大変ですが、家に帰れない運転手の気持ちをほんの少しで良いので知って欲しくて記事にしました。
      そのような事を思ってくれる方がひとりでもいるだけで本当に励みになります!

      暑い日が続きますが、かめだ様もどうかご自愛ください。