皆さんは「トラック運転手」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
「怖そう」「いかつい」「態度がでかい」「ガラが悪い」…そんな印象を持っている方も多いのではないでしょうか。確かに一昔前は、そういったアウトローなイメージが強かった業界かもしれません。
でも、現役のトラックドライバーとして現場で働いている私から言わせてもらうと、そのイメージは半分正しくて、半分間違っています。
今回は、なぜそういう印象を持たれるのか、そして実際の現場はどうなのかを、リアルな体験談を交えながらお話しします。きっと皆さんの固定観念が変わるはずです。
「見た目が怖い・いかつい」運転手が存在する理由
確かにそういう運転手もいる
まず最初に正直に言います。確かに見た目が威圧的で、いかつい運転手は存在します。これは事実です。
でも、ちょっと待ってください。なぜ彼らがそういう見た目をしているのか、その理由を知っていますか?実は、そこには深い事情があるんです。
意外と知られていない現場の現実
一般の方にはあまり知られていませんが、荷主や積み場・降ろし場の関係者の中には、運転手を見下すような態度を取る人が少なくありません。
「たかが運転手が」「言われた通りにやってればいいんだ」といった心ない言葉を投げかけられることもあります。理不尽な要求をされたり、横柄な態度で接されることも日常茶飯事です。
「ナメられない見た目」は自衛手段
そんな環境の中で、自分の身を守るために「ナメられない見た目」を作る運転手が多いのも事実です。これは威嚇のためではなく、予防のためなんです。
私たち運転手は、毎日気持ちよく運転していたいんです。理不尽な扱いを受けてイライラしながら運転するなんて、安全運転にも支障が出ますし、何より精神的に辛い。だから、最初から「この人には変な態度は取れないな」と思わせるような見た目にする人もいるわけです。
これって、ある意味では職場でのスーツと同じような「制服」みたいなものかもしれませんね。
「態度がでかい・すぐ怒鳴る」運転手の正体
どの業界にもいる”すぐ怒鳴る人”
次に、態度がでかくてすぐ怒鳴る運転手について話しましょう。
でも、ちょっと思い出してみてください。あなたの職場にも、すぐに怒鳴る人っていませんか? 運送業界だけの問題じゃないんです。どの業界にも、大きな声を出して周りを威嚇しようとする人っているものです。
そういう人たちの心理って、だいたい同じなんです。自分の恥ずかしさを隠すために、大きな声で相手を圧倒しようとしているんです。
実体験:怒鳴る人の正体が見えた瞬間
実際に私が体験した話をお聞かせします。
初めて行く積み場で、どこにトラックを停めたらいいかわからずとりあえず邪魔にならなそうな場所に停めていました。
するとある運転手に「そんな所にトラック停めてたら邪魔だ!」と怒鳴られたんです。
最初は「すみません」と謝りましたが、よく観察してみると、その方は私のトラックが少し邪魔な位置にあるだけで自分で上手くトラックを操って対処する技術がないことがわかりました。
だから恥ずかしくて、怒鳴ることで誤魔化そうとしていたんです。
本当に腕の良い運転手は怒鳴らない
一方で、本当に運転技術の高いベテランドライバーは全然違います。
多少邪魔な所にトラックが停まっていても、黙って自分でサラッと何とかしてしまいます。文句も言わず、怒鳴りもせず、スマートに問題を解決する。これが本当のプロの姿なんです。
だから、もし態度のでかい運転手を見かけることがあったら、「あ、この人は自分で何とかする腕がないから怒鳴ってるんだな」と、温かい目で見てやってください。
見た目と中身の意外なギャップ
「いかつい見た目ほど実は優しい」の法則
現場でいろいろな運転手さんと接してきて気づいたことがあります。
見た目がいかつい人ほど、実は優しい人が多いんです。
これは本当に不思議な現象で、最初は驚きました。タトゥーが入っていたり、強面だったりする人が、実際に話してみると物腰が柔らかくて、困った時にはすぐに助けてくれる。
心温まるエピソード
私がまだ初心者だったある日、荷物の積み方がわからなくて困っていた時のことです。見た目がとてもいかつい先輩ドライバーがいたんですが、声をかけるのを躊躇していました。
でも、その方から「大丈夫?手伝おうか?」と声をかけてくれて、丁寧に積み方を教えてくれたんです。しかも「最初はみんなわからないから、遠慮しないで何でも聞いて」と優しい言葉まで。
最後には缶コーヒーを奢ってくれて、目的地まで早く着く近道まで教えてくれました。
こういう経験をすると、本当に見た目で判断してはいけないなと思います。
業界全体の変化と現実
現代のトラック運転手事情
実は、トラック運送業界も大きく変わってきています。
高齢化と人手不足の影響で、様々な背景を持つ人が業界に入ってくるようになりました。元サラリーマン、元公務員、大学を卒業したばかりの若い人、女性ドライバーも増えています。
もはやトラックドライバー=ちょっとアウトローな人種ではありません。
企業の取り組みも変化
運送会社側も、昔のような「気合と根性」だけの時代は終わっています。「黙って言う事聞け、嫌なら辞めろ」なんて言う会社はほとんど見かけなくなりました。
コンプライアンスを重視し、運転手の労働環境改善に取り組む企業が増えています。研修制度も充実し、安全運転や接客マナーの教育にも力を入れています。
誤解を解くために知ってほしいこと
私たちは社会を支えています
トラック運転手は、皆さんの生活に欠かせない仕事をしています。スーパーに並ぶ商品、ネット通販で注文した荷物、工場の原材料…これらすべてを運んでいるのは私たちです。
特にかつてのコロナ禍では、エッセンシャルワーカーとして社会を支え続けました。私たちがいなければ、経済活動は成り立ちません。
多様な人材が活躍する現場
現在の運送業界には、本当に様々な人が働いています。真面目で責任感が強く、家族思いの人がほとんどです。「怖い人ばかり」というのは、もう過去のイメージなんです。
読者の皆さんへお願い
見た目だけで判断しないで
もしトラック運転手と接する機会があったら、見た目だけで判断しないでください。一部の人の行動で、業界全体を判断するのは公平ではありません。
どの業界にも一定数変な奴はいます。
一見爽やかなサラリーマンが歩きたばこで道に唾吐いている所だって見たことがありますし、大人しそうな人が高速走路でプロボックスで周りの車を煽りまくっている所を見たことだってあります。
温かい目で見守って
もし態度の大きな運転手を見かけることがあっても、「技術不足を隠そうとしているのかな」「何か嫌なことがあったのかな」と、理解と寛容の気持ちを持っていただけると嬉しいです。
まとめ
トラック運転手の実像は、皆さんが想像しているのとは大きく違うかもしれません。
確かに見た目がいかつい人や、態度の大きい人もいます。でもそれには理由があり、多くの場合は自分を守るための手段だったり、技術不足による恥ずかしさの表れだったりします。
そして何より、見た目がいかつい人ほど実は優しく、本当に腕の良い運転手は怒鳴ったりしないということを覚えておいてください。
私たちトラック運転手は皆さんと同じ普通の人間です。
家族を愛し、真面目に働き、社会に貢献したいと思っています。どうか偏見を持たず、温かい目で見守っていただければと思います。
物流を支える私たちと、荷物を受け取る皆さん。
お互いを理解し合えればもっと良い社会になるはずです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
またお会いしましょう!
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